映画『オリエント急行殺人事件』を観た。

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本来ならばブログ開始にともない「はじめましての御挨拶 余計なことも紹介しよう(by SPITZ)」的なことを書かなければならないと思うのですが、今年は『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(タマフル)の課題映画を全部観ることを目標にしていて、今日がその放送日ということなので、急いで感想をアップしようと思います。

 

オリエント急行殺人事件」。アガサクリスティーの名作小説かつ一度映画化されている作品で今回公開されたのはリメイク版なのですが、恥ずかしながら旧作はおろか原作小説すら触れていませんでした。フジテレビが過去に三谷幸喜さん主導で日本版ドラマを制作されておりましたが、食指が伸びなかったことや三谷作品への個人的な信頼のなさなどから敬遠しておりました(映画観ながら三谷さん好きそうだなぁ~と思いました)。

 

というわけで今回は昨夜映画館でリメイク版を観たあと、本日の朝TSUTAYAで借りてきた旧作版を観た検証結果(というほどのものでもないですが)なのですが、旧作を観たことで「なんか悪い方向に変わっているなぁ~」というのが率直な感想です。

 

まず、ポアロのキャラクター設定。旧作版は古畑任三郎コロンボみたいなユーモアを交えつつも聴取している相手にボロを出させながら、推理をしていく展開だったのですが。今回のリメイク版、冒頭で神経質な人物(卵の大きさ、ネクタイの曲がり具合、シンメトリーなヒゲなど)ちょっとユーモアなキャラクターですよ的な説明展開があるにも関わらず、最初と最後しか生かされていないという印象です。とくに中盤ある人物に対して執拗な取り調べをするんですが、あまりの声の荒げっぷりに観ていても「なんかこういう人を名探偵っていっていいのかな?ただの気性が激しいジジイじゃん」と思ってしまいました。物語の終盤、ある理屈に声を荒げるシーンがあるんですが、中盤のこのシーンのせいでカタルシスがあまり起きませんでした。相棒の杉下右京みたいに普段冷静だけれど、どうしても許せないときに荒げる人みたいな設定にしたほうがよろしかったのではないでしょうか?

改悪で特筆すべきは、鉄道会社の重役・ブークのポジション。旧作版では物語終盤、重大な決定権を彼に委ねるのですが、リメイク版ではその役回りもポアロが担ってしまっていて。ただの傍観者でしかなく、おまけに序盤の現在の地位を担っている説明というのがあまり好感をもてるものではないので最後に旧作版のような重要な役回りをさせればいいのでは?と思ってしまいました。非常に残念です。あと、伯爵役のセルゲイ・ポルーニンに合わせた無駄なバレエシーンとか出したらキリがないですね。

 

キャラクター設定だけでなく演出部分にも不可解なところはあって、特に事件のトリックを暴く部分。招かれざる客ポアロがいるという条件のもと、この事件を起こすには少し想像し過ぎるのではないでしょうか?ポアロが謎解きをするシーンもおそらく最後の晩餐的な長いテーブルに横一列みたいなのをやりたかったと思うんですが、ビジュアルとしてキレイでも凄い不自然に感じました。原作小説を読んでないので、そういう展開があったのかもしれませんが、今回足された2つのシーンもあまり意味を成していない気がします。

 

冒頭で三谷さんが好きそうと申し上げましたが、三谷映画における「豪華キャスト揃えてやれば面白い」という浅はかなスタンス・思考の方が海外にもいらっしゃるんだなと思いました。

追記:肝心な一人ひとりへの取り調べも、結末を考えると話してはいけないことをボロボロと率先して喋りすぎな気がします。特にポアロが誘導尋問をしたわけでもないのに。

改良?というかブラッシュアップされていた点といえばポアロが今回の事件を調査することを決断することが、鉄道会社の重役・ブークの進言なのですが、これについては年末日本のバラエティでも物議を醸していることもあってよかったと思います。登場人物を減らしたのもよかったと思います。 

とはいえ、やはり誰もが認めるミステリー作品の代表格であることは納得のできる内容でした。ジョニーデップとかペネロペクルスとかを観たいという人はぜひリメイク版を観て旧作版をご覧ください。